めっきの膜厚は、製品の性能や外観を大きく左右する重要な品質要素です。製品の用途や要求性能によって厳密に定められており、規定値から外れてしまうと、機能不良や外観不良につながる可能性があります。
膜厚は”µm” という単位で表されます(1 µm=1 mmの1/1000)。たとえば、基板では金めっきが0.05 µm前後とニッケルめっきが1~10 µm程度、電子部品ではスズめっきとニッケルめっきがそれぞれ5 μm前後、鉄鋼製品では亜鉛めっきが10 µm前後の膜厚で付けられることがあります。
私たちが肉眼で見える最小の大きさは、約100~200 µmですが、めっきの膜厚はそれより遥かに薄い場合も多いです。では、どのようにしてこの“見えない品質”を正確に測定しているのでしょうか?本コラムでは、当社で実施している「蛍光X線式膜厚測定」についてご紹介します。
蛍光X線式膜厚測定は、蛍光X線膜厚計という装置を使用して、膜厚を測定する方法です。製品一つに対して、数秒〜数十秒と、短い時間で測定が可能です。また、製品を傷つけることなく膜厚を確認できるため、量産品の品質管理に非常に適しています。
蛍光X線膜厚計では、膜厚を測定したい製品にX線を照射することで、製品に含まれている元素が特有の“蛍光X線”を発します。この蛍光X線から、元素ごとに固有のピークが得られ、図3のようなスペクトルに変換されます。スペクトルの横軸はX線のエネルギー、縦軸はピークの強度を示しています。スペクトル中のピークのエネルギー、および強度を見ることにより、めっきの膜厚だけでなく、製品に含まれる元素の種類も調べることができます。
蛍光X線膜厚計は便利な手法ですが、製品の形状や材質、めっき層の組み合わせによっては、誤差が生じることがあります。当社ではこの課題を解決するために、蛍光X線の測定値と、製品断面にて測定した実測値の整合性を確認しています。蛍光X線の測定値に誤差がある場合は、分析条件の補正を行うことで、精度の高い測定が可能になります。このプロセスは量産品の初回評価に組み込まれており、当社の製造工程全体で信頼性の高い膜厚管理を実現しています。