めっき加工における品質の安定には、めっき液の管理が非常に重要です。金属成分や添加剤のバランスをしっかりチェックし、管理することで異常の早期発見や予防的な液のメンテナンスが可能となります。管理を怠ると、仕上がりにムラが出たり、密着不良や外観不良、膜厚に影響が出ます。分析データに基づいた管理を徹底し主成分や添加剤、不純物の濃度を正確に管理することで常に安定した品質を維持することができます。
めっき液の主成分は、金属が高濃度で含有しているため、割と容易に分析ができ、主に滴定分析法(手動・自動)を用いて濃度分析をします。
脱脂や酸処理などの前処理液の主成分濃度も滴定分析で分析が可能です。ただ、金属濃度の中でも、金めっきや銀めっきなど、滴定分析ができないものもあり、それら金属濃度については、ICP装置などの機器分析で濃度分析を行います。
めっき液の主成分が分析できても、それだけではめっき液としてのバランスを確認することはできません。主成分の金属イオン以外にも添加剤、錯化剤、還元剤、光沢剤などがめっき液には含まれており、消耗や劣化などで日々変動しています。例えば無電解Niめっき液の場合、還元剤として次亜リン酸が含まれていますが、使用していくにつれ亜リン酸に変化し蓄積していきます。CE(キャピラリー電気泳動)ではこれらの2成分を同時に分析することが可能で(図1)、減少した分の次亜リン酸の補給量の確認や亜リン酸の蓄積量の確認に役立てられます。
その他、UV(分光光度計)、CVS、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、ICPなどの機器分析を用いて様々な分析を行っています。
めっき液は、前工程液の持ち込みや、素材溶出、陽極溶出等により不純物が蓄積されます。蓄積された不純物があることで、めっき皮膜の形成やめっき外観に悪影響を及ぼします。定期的に不純物濃度を確認することで、めっき液の劣化状態がわかり、液更新の目安となります。金属が高濃度で含有しているめっき液中の微量な金属濃度(不純物)を測定するには、ppm(mg/L)・ppb(µg/L)オーダーまで分析可能な高精度分析装置(ICP)と、適正な前処理等の条件設定が必要です。弊社では経験豊富な技術者が分析を行っております。
液濃度分析は、現在の液の状態を把握するための手段となっています。安定した品質を維持するためには、濃度測定を行うだけでなく、その結果を分析・管理することが重要です。弊社ではX-Rs管理図を用い、SPC(統計的工程管理)を行っています。連や傾向等の異常判定ルールに従って、製造工程で発生する変動を迅速に発見し、異常発生の未然防止につなげています。