4 「めっきの工法・設備」の章

  1. 01 バレルめっき

5 「めっきに必要な処理」の章

  1. 01 綺麗にめっきをするには?
目次

6「めっき皮膜の種類と特徴」の章 無限の可能性を秘めた複合めっき

複合めっきとは、めっき皮膜中に別の材料の粒子が入っためっき皮膜を指します。
めっき皮膜と粒子の材料との組み合わせによって、新たな特性を持つ皮膜ができます。
近年、特に盛んに研究がなされているめっき分野の一つです。

水滴をはじく黒色撥水めっき

複合めっきのメカニズムと特徴

複合めっきの原理を説明します。

①めっき液中に複合させる粒子(複合材)を混合します。
②めっきを行います。めっきが析出する際に、近くにある複合材がめっきに取り込まれます。

以上です。単純じゃないか、と思われますよね。
実は、狙い通りに複合材を複合させるには、高度な技術力が必要となります。
めっき皮膜と粒子の材料との組み合わせによっても、その条件は異なりますので、カスタマイズが必要となります。

そんなに複合めっきが大変なら、めっき皮膜の上に複合材を塗って積層すればいいのでは?と思いませんか?
そこには、複合めっきならではの特徴があります。
複合めっきには、めっき皮膜内部にも複合材が入っている、ということです。
例えば、製品を使っていると、表面が削れていきます。
表面にだけ複合材がある場合、その表面が1層削れれば機能を失います。
一方で、複合めっきの場合、めっきの表面が削られても、内部の複合材が出てきて、機能が持続します。
このように、複合めっきならではのメリットはたくさんあるのです。

では、具体的にどんな複合めっきがあるのか、紹介いたします。

複合めっきのメカニズムイメージ

複合めっきの事例

テフロン複合めっき(PTFE複合めっき)

PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)というフッ素樹脂粒子をニッケル皮膜に複合させた皮膜は、潤滑性、耐摩耗性、撥水性、離型性に優れています。
用途としては、カメラ用シャッタ部品、アイロン、金型、医療機器等、多くの分野で使われています。
めっき会社で行われている複合めっきの中で、一番多いのが、この複合めっきではないでしょうか。
当社でも試作から量産まで実績があります。

PTFE複合めっきの中の開発品一つとして、黒色撥水めっきがあります。
写真は、ステンレス基材に黒色撥水めっきを施したものです。水を垂らすと丸くはじきます。

 

左:ニッケルめっき 右:PTFE複合Niめっき

ダイヤモンド複合めっき

ご存じの通り、ダイヤモンドは非常に硬い物質です。
ダイヤモンドを複合させることで、高硬度、耐摩耗性を持つ皮膜となります。
粒子サイズとしては、数マイクロ~数百マイクロサイズのダイヤモンドを複合させることもあります。
表面にダイヤモンドが露出しているため、ごつごつした表面になっています。
一般的な用途としては、歯科用ドリル刃、工具用やすり、ウエハ表面の平坦化のためのCMP研磨パッドなどに使われています。
当社の場合、上記の一般な用途事例向けとはやや異なる複合複合めっきの試作を行っております。

炭化ケイ素複合めっき(SiC粒子)

ダイヤモンドまでとはいきませんが、こちらも硬さが特徴の粒子です。
小さい粒子を複合させるため、表面がごつごつしているということはなく、摺動性に優れています。
そのため、油圧ポンプ部品、ロボット用部品、製糸用ロールガイド等の摺動部分に使われています。
当社でも試作ご相談可能です。

これらは、ほんの一例で、様々な仕様の複合めっきのご依頼をいただいております。
複合させる粒子の量でも、皮膜特性が変化することもあり、本当に、複合めっきの組み合わせは無限にあり、大いなる可能性が秘められていることを感じさせられます。