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2めっきをもっと学びたい方へ しやすい?しにくい?鉄へのめっき

めっきは”つけばいい”だけじゃない

昔から現在までめっきをする品物として最も多い材料は、鉄系材料です。
「鉄の品物は電解めっきの場合、電気を流せばめっきがつき、無電解めっきの場合、液に浸漬するだけでめっきがつきます」と紹介したとおり、鉄の材料にめっきを付けることは簡単です。
しかし、実際の品物にめっきする場合は、単にめっきが付けばいいというだけではありません。
密着性は良いか、変色やザラなどの外観異常がないか、などのめっきの品質が要求されます。
品物の種類によって、組成内容や素材状態が異なるため、それぞれに合わせて良い品質のめっきを行う必要があります。
そのためには、めっきの処理工程や処理条件の最適化が必要となります。

”鉄”にはたくさん種類があり、その数だけめっき工程があります。

一口に鉄系と言っても、多種多様の種類が有ります。
めっきがしやすい材料、しにくい(不向き)材料も当然ながらあります。
例えば、鋳鉄(鋳物)は、表面に小さな穴(巣穴)が多数あり、穴にトラップされたものが染み出してくるため、めっき後の仕上がりに大きな影響を及ぼします。
従って、めっきには不向きな材料となります。
 


炭素鋼へのめっきは難しい?

炭素鋼へのニッケルめっき品

炭素鋼とは、炭素0.05~2.14mass%を含み、炭素量を増やして硬度や強度を増加させた鉄鋼材を言います。
用途としては、耐久性が要求される機械・装置部品・車載部品が挙げられます。
広く使われている材料ですが、めっき加工の立場からすると、注意が必要な材料の1つです。
例えば、炭素が多いと、めっき工程の前処理工程で品物の表面にスマット(不純物残渣)が発生します。
素材とめっきとの間にスマットがあると、素材とめっきとの密着が弱くなるので、ふくれを起こすことがあります。
当社では、炭素鋼にも対応した工程を設計しておりますので、写真で示すように、密着の良いめっき仕上がりになります。

鉄系材料の種類による特徴や用途例

最後に、鉄系材料の種類や特徴をまとめた参考資料を掲載します。

構造用鋼

種類 特徴 使用例
構造用圧延鋼材
(JIS記号:G3101,G4051、材料記号:SS,S--C)

低炭素

ポピュラーな鋼材

あらゆる産業分野。
H鋼
(JIS記号:G4052、材料記号:SCM)
低炭素、低合金、焼入れ性を保証した鋼。機械部品。
Al-Cr-Mo鋼
(JIS記号:G4202、材料記号:SACM)
表面窒化鋼自動車部品、一般機械部品。
Ni-Cr鋼
(JIS記号:G4102、材料記号:SNC)
旧はだ焼鋼を含む。普通炭素鋼よりも焼入れ性がよい。クランクシャフト、歯車、軸、ボルト、ナット、キー等の機械部品
Ni-Cr-Mo鋼
(JIS記号:G4103、材料記号:SNCM)
Cr鋼
(JIS記号:G4104、材料記号:SCr)
Cr-Mo鋼
(JIS記号:G4105、材料記号:SCM)

 

特殊用途鋼

種類 特徴 使用例
炭素鋼工具鋼
(JIS記号:G4401、材料記号:SK)
高炭素工具、ばね材。
合金工具鋼
(JIS記号:G4407、材料記号:SKS, SKD, SKT)

高炭素

切削用、耐衝撃用、耐摩不変形用、熱間加工用の4種に大別できる。

工具、ばね材。
高速度鋼
(JIS記号:G4403、材料記号:SKH)

高炭素、高合金。

18W-4Cr-1Vの成分が基本形。

工具、ダイス、ポンチ、ロール、軸受、押出形。
耐熱・耐食鋼
(JIS記号:G4403~4309、G4311~4312)
ステンレス鋼で、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、析出硬化系の4種がある。マルテンサイト系の一部を除き低炭素。工具、ベアリング、刃物、カミソリ刃、歯車、導波管(地上局用)。
耐食・耐熱合金
(JIS記号:G4901~4904)
 
炭素をほとんど含まず、Fe成分も50%以下で、Ni等を主成分としたもの。リードフレーム、半導体ステム、精密機械部品、時計、バルブ。

鋳鍛鋼

種類 特徴 使用例
鍛鋼品
(JIS記号:G3201~3251、材料記号:SF, SFV, SFVV, SFCM, SFNCM)
 中・低炭素で化学成分は前記鋼材の一部に相当する。構造用材
鋳鋼品
(JIS記号:G5101~5202、材料記号:SC, SCW, SCC, SCMn, SCSiMn, SCMnCr, SCMnM, SCCrM, SCMnCrM, SCNCrM, SCS, SCH, SCMnH)
普通鋳鋼(炭素鋼)と合金鋳鋼があり、化学成分は前記鋼材の一部に相当する。均質化焼鈍をして使用する。鎖、錨


鋳鉄

種類 特徴 使用例
ねずみ鋳鉄
(JIS記号:G、材料記号:FC)
 普通鋳鉄とも呼び、2.4~4.5%の炭素を含む。成分規格はなく強度規格であり、鋳造性にすぐれ、広く使用されている。 シリンダ、ライナー、ピストンリング
 球状黒鉛鋳鉄
(JIS記号:G5502、材料記号:FCD)
 ダクタイル鋳鉄とも呼び、鋳造時に特殊元素(Mgが多い)を添加し、黒鉛を球状にしたもので、40~70kgf/mm2の強度を有する。※めっきには不向き鉄管継手、車輌部品。
 可鍛鋳鉄
(JIS記号: G5702~5704、材料記号: FCMB, FCMW, FCMP)
 鋳造時は白鋳鉄であり、熱処理により素地を変え黒鉛を発生させる。黒心可鍛鋳鉄(フェライト素地)、白心可鍛鋳鉄(脱炭によりフェライト素地)、パーライト、鋳鉄(パーライト素地)の4種があるが、特殊(ベーナイト素地)の場合もある。※めっきには不向き 鉄管継手、車輌部品。
 合金鋳鉄

 鋼と同様の目的により合金化したもので、現在は規格化されていないが、つぎのようなものが使用されている。

合金チルド鋳物:表面のみ白鋳鉄化
アシキュラー鋳鉄:Ni-Mo系でベーナイト素地
ニレジスト:Ni-Cr系でオーステナイト鋳鉄

 カムシャフト、ダイス、シリンダ部品、クランク、シャフト、ロールガイド。